空林

空林
三好達治

山毛欅の林 楢の林 白樺の林 ひと年私は山に住ひ 彼らの春の粧ひと
彼らの秋の凋落を見た けれども彼らの裸の姿 雪の上のたたずまひこそ
わけても私の心にしみる 何故だらう そのことわけを問ひながら
今日もまた林に憩ふ やうやく私のものとなつた この手足この老年が珍らしく



青空文庫より引用