冬の歌


古家をれて
蒼い夕をおとづれる
沈黙の煙のはね

匍ひめぐる霧の奥に
森や山が闇を語つてゐる。

ほそぼそと銀を乱す
蜘蛛くもの網の
湿り気を吐く糸目にまつはつて
苦しい死を訴へる羽虫のなきがら。

こごえた冬のうろつくところ
欝陶うつたうしいたましひの旅が始まる……



青空文庫より引用