昔の大名の心意気


 十五の事で御座ございます、殿「近侍きんじのもの。侍「ハアー。殿「今宵こよひは十五るの。侍「御意ぎよい御座ござります。殿「お月さまはモウ出たか。侍「おそれながら御前ごぜんさまはお大名だいみやう御身おみりながら、お月さまとおほせられましては、小児せうに童子わらべことにて、歌俳諧うたはいかいにでも月は月で事はますやうぞんじます。殿「アヽ左様さやうか、もそツとぞんざいにつてもよろしいとまうすのか。侍「いえ、ぞんざいとまうわけりませんが……。殿「うぢや月は/\。侍「えわたりまして御座ござります。殿「シテ星奴等ほしめらも出たか。



青空文庫より引用