(洋)金の勘定を仕ずに来た


 独逸どいつ名高なだかい作者レツシングとふ人は、いたつて粗忽そそつかしいかたで、其上そのうへ法外ばかに忘れツぽいから、無闇むやみ金子かねなにかゞくなる、「これなんでも下婢かひ下男げなん窃取くすねるに相違さうゐない、一ばん計略はかりごともつためしてやらう。とふので、レツシング先生或時あるとき、机の上へ金銀かねをバラ/″\散らかしたまゝ、スーツと友達のうちへやつてまゐり、レ「此頃このごろ無闇むやみ金子かねくなつてやうがいから、これ/\ふ事にしてた、これたれが取るとふのがチヤンとわかるね。友「へーえ、それうまい事を考へたが、全体ぜんたい幾許いくら置いてたんだ。レ「ア、かね勘定かんぢやうずにた……それではなんにもなりませぬ。



青空文庫より引用