坊や


山に清水が流れるやうに
その陽の照つた山の上の
硬い粘土の小さな溝を
山に清水が流れるやうに

何も解せぬ僕の赤子ぼーや
今夜もこんなに寒い真夜中
硬い粘土の小さな溝を
流れる清水のやうに泣く

母親とては眠いので
目が覚めたとて構ひはせぬ
赤子ぼーやは硬い粘土の溝を
流れる清水のやうに泣く

その陽の照つた山の上の
硬い粘土の小さな溝を
さらさらさらと流れるやうに清水のやうに
寒い真夜中赤子ぼーやは泣くよ
 (一九三五・一・九)



青空文庫より引用