山の上には雲が流れてゐた

あの山の上で、お弁当を食つたこともある……
  女の子なぞといふものは
  由来桜の花弁はなびらのやうに、
  よろこんで散りゆくものだ

  近い過去も遠いい過去もおんなじこつた
  近い過去はあんまりまざまざ顕現するし
  遠いい過去はあんまりもう手が届かない

山の上に寝て、空をみるのも
此処にゐて、あの山をみるのも
所詮は同じ、動くな動くな

あゝ、枯草を背に敷いて
やんわりぬくもつてゐることは
空の青が、少しく冷たくみえることは
煙草を喫ふなぞといふことは
世界的幸福である



青空文庫より引用