ある日
ある日
市電ののりかえで待っていると
一人の女の人がやってきた
洋服も帽子も見たこともないような古い型で
汚れて穴もあいている
断髪の毛は赤ちゃけ
木綿靴下の足がすりこぎのように弾力がない
電車がきて
彼女はわたしの前に向かい合った
健康でない
むしろやつれた細面のかお
けれども
目は
生き生きとして
ひとところを見ていた
彼女はどんな過去を持っているのだろう
風呂敷き包みをきちんとかかえ
どんな仕事をしているんだろう
亭主や子供があるんだろうか
青空文庫より引用
前回の続きから再開しました。