冠松次郎氏におくる詩


つるぎ岳、冠まつ、ウジちよう 、くまのアシアト、雪渓せつけい、前つるぎ
こなダイヤとほし、凍つた藍のやま々、冠まつ、ヤホー、ヤホー、

廊下らうかがる蜘蛛くも人間にんげん
まつ廊下らうかのヒダで自分のシワを作つた。
まつ皮膚ひふ皮膚ひふに沁みる絶壁ぜつぺきのシワ、
まついはく。
まつかんがへてゐる電車でんしやなか
黒部峡谷くろべけふこく廊下らうかかべ
廊下は冠まつみゝモトで言ふのだ、
まつよ 冠まつよ、

まつく、
黒部くろべうは廊下、した廊下、おく廊下、
てつでつくった カンヂキをはいて、
てつできたへた友情いうじやうをかついで、

つるぎ岳、立山たてやま、双六たに黒部くろべ
あんな大きいやつともだちにしてゐる冠まつ
あんな大きいやつがよつてたかつ てふのだ、
まつくらゐおれをつてゐる男はないといふのだ
あんなきよ大なやつの懐中で、
こなダイヤのほししたで、
まつは鼾をかいて野営やえいするのだ。



青空文庫より引用