職員室

職員室
宮沢賢治

歪むガラスのかなたにて
藤をまとへるさいかちや
西は雪ぐも亙せるに
一ひらひかる天の青

ひるげせはしく事終へて
なにかそぐはぬひとびとの
暖炉を囲みあるものは
その石墨をこそげたり

業を了へたるわかものの
官にあるは卑しくて
一たび村に帰りしは
その音づれも聞えざり

たまさかゆれしひばの間を
茶羅紗の肩をくすぼらし
校長門を出で行けば
いよよにゆがむガラスなり



青空文庫より引用