駅長

駅長
宮沢賢治

ことことと行く汽車のはて
温石いしの萱山の
上にひとつの松ありて
あるいは雷にうたれしや
三角標にまがへりと
大上段に真鍮の
棒をかざしてさまよへり

ごみのごとくにあきつとぶ
高圧線のま下にて
秋をさびしき白服の
酒くせあしき土木技手
いましも汽車を避け了へて
こなたへ来るといまははた
急ぎガラスを入りにけり



青空文庫より引用