晩春小曲

晩春小曲
富永太郎

五月のほのかなる葉桜の下を
遠き自動車は走り去る。
わが欲情を吸収する
堀ばたの赤き尖塔よ。
埃立つ道に沿ひて
兵営の白き塀は曲り行く。



青空文庫より引用