橋の上の自画像
今宵私のパイプは橋の上で
狂暴に煙を上昇させる。
今宵あれらの水びたしの荷足は
すべて昇天しなければならぬ、
頬被りした船頭たちを載せて。
電車らは花車の亡霊のやうに
音もなく夜の中に拡散し遂げる。
(靴穿きで木橋を蹈む淋しさ!)
私は明滅する「仁丹」の広告塔を憎む。
またすべての詞華集とカルピスソーダ水とを嫌ふ。
哀れな欲望過多症患者が
人類撲滅の大志を抱いて、
最後を遂げるに間近い夜だ。
蛾よ、蛾よ、
ガードの鉄柱にとまつて、震へて、
夥しく産卵して死ぬべし、死ぬべし。
咲き出でた交番の赤ランプは
おまへの看護には過ぎたるものだ。
青空文庫より引用