煙草の歌


阪を上りつめてみたら、
盆のやうな月と並んで、
黒い松の木の影一本……
私は、子供らが手をつないで歌ふ
「籠の鳥」の歌を歌はうと思つた。
が、忘れてゐたので、
煙草の煙を月のおもてに吐きかけた。
煙草は
私の
歌だ。



青空文庫より引用