おもちゃ店 長二ちょうじは貧乏びんぼうの家いえに生うまれておもちゃも持もたずに死しんでしまった。美うつくしいガラス張ばりの店頭みせさきに、西洋せいようのぜいたくな小間物こまものや、赤あか、紫むらさきに、塗ぬったゴムまりやぴかぴかと顔かおの映うつる銀笛ぎんてきや、らっぱや、なんでも子供こどもの好すきそうなものが並ならべてあるのを見みると、店みせのガラス戸どを砕くだいてそれらのものをめちゃめちゃにたたき壊こわしてやりたくなる。隣となりに住すんでいた、あの貧まずしかった、哀あわれな長二ちょうじのことを思おもい出だしたときに。青空文庫より引用