延若礼讃 うらゝかな春の入日、ちりりに地面も空もまつ白に、過ぎ行く花の幻影――その中に、かつきりと立つた延若の五右衛門――。私はその頭・背から輝き出る毫光を感じました。「国くづし」の立敵の表現は、歌舞妓の世界に、此が見をさめになつて行く。さう言ふ悲痛な信仰に似たものに、心が潤うて来るのをおさへることが出来ませんでした。青空文庫より引用