ふるさと


赤城山の雪流れ出で
かなづる如くこの古き町に走り出づ
ひとびとはその四つ辻に集まり
哀しげに犬のつるむを眺め居たり
ひるさがり
床屋の庭に石竹の花咲きて
我はいつもの如く本町裏ほんまちうら河岸かしを行く
うなだれて歩むわが背後うしろ
かすかなる市人いちびとのささやききこえ
人なき電車はがたこんと狹き街を走り行けり
我が故郷ふるさとの前橋



青空文庫より引用