偏狂 あさましき性のおとろへ、あなうらに薫風ながれ、額に緑金の蛇住めり、ああ我のみのものまにや、夏ふかみ山路をこゆる。かなしきものまにや、のぞみうしなひ、いつさいより靈智うしなひ。さびしや空はひねもす白金、はやわが手かたく合掌し、瞳めはめしひ、腦ずゐは山路をくだる。ああ金性の肉のおとろへ、みやま瀧ながれ、青らみいよいよおとろふ、いのれば銀の血となり、肉やぶれ谷間をはしる。金性のわがものまにや。 ――吾妻山中にて――青空文庫より引用