南京陷落の日に
南京陷落の日に
萩原朔太郎
歳まさに暮れんとして
兵士の銃劍は白く光れり。
軍旅の暦は夏秋をすぎ
ゆうべ上海を拔いて百千キロ。
わが行軍の日は憩はず
人馬先に爭ひ走りて
輜重は泥濘の道に續けり。
ああこの曠野に戰ふもの
ちかつて皆生歸を期せず
鐵兜きて日に燒けたり。
天寒く日は凍り
歳まさに暮れんとして
南京ここに陷落す。
あげよ我等の日章旗
人みな愁眉をひらくの時
わが戰勝を決定して
よろしく萬歳を祝ふべし。
よろしく萬歳を叫ぶべし。
青空文庫より引用
萩原朔太郎
歳まさに暮れんとして
兵士の銃劍は白く光れり。
軍旅の暦は夏秋をすぎ
ゆうべ上海を拔いて百千キロ。
わが行軍の日は憩はず
人馬先に爭ひ走りて
輜重は泥濘の道に續けり。
ああこの曠野に戰ふもの
ちかつて皆生歸を期せず
鐵兜きて日に燒けたり。
天寒く日は凍り
歳まさに暮れんとして
南京ここに陷落す。
あげよ我等の日章旗
人みな愁眉をひらくの時
わが戰勝を決定して
よろしく萬歳を祝ふべし。
よろしく萬歳を叫ぶべし。
青空文庫より引用