感傷の塔
感傷の塔
萩原朔太郎
塔は額にきづかる、
螢をもつて窓をあかるくし、
塔はするどく青らみ空に立つ、
ああ我が塔をきづくの額は血みどろ、
肉やぶれいたみふんすゐすれども、
なやましき感傷の塔は光に向ひて伸長す、
いやさらに伸長し、
その愁も青空にとがりたり。
あまりに哀しく、
きのふきみのくちびる吸ひてきずつけ、
かへれば琥珀の石もて魚をかこひ、
かの風景をして水盤に泳がしむるの日、
遠望の魚鳥ゆゑなきに消え、
塔をきづくの額は研がれて、
はや秋は晶玉の死を窓にかけたり。
青空文庫より引用
萩原朔太郎
塔は額にきづかる、
螢をもつて窓をあかるくし、
塔はするどく青らみ空に立つ、
ああ我が塔をきづくの額は血みどろ、
肉やぶれいたみふんすゐすれども、
なやましき感傷の塔は光に向ひて伸長す、
いやさらに伸長し、
その愁も青空にとがりたり。
あまりに哀しく、
きのふきみのくちびる吸ひてきずつけ、
かへれば琥珀の石もて魚をかこひ、
かの風景をして水盤に泳がしむるの日、
遠望の魚鳥ゆゑなきに消え、
塔をきづくの額は研がれて、
はや秋は晶玉の死を窓にかけたり。
青空文庫より引用