月蝕皆既
月蝕皆既
萩原朔太郎
みなそこに魚の哀傷、
われに涙のいちじるく、
きみはきみとて、
ましろき乳房をぬらさむとする。
この日ごろつかふことなく、
ひさしくわれら靈智にひたる、
すでに長き祈祷ををへ、
いまみれば月も皆既なり、
魚の性はせんちめんたる、
みよ、うみはみどりをたたへ、
肉青らみ、
いんいんとして二人あひ抱く、
齒と齒と合し、
手は手をつがひ、
もつれつつからまりにつつ、
いんよくきはまり、
魚の浪におよぎて、
よるの海に青き死の光れるをみる。
青空文庫より引用
萩原朔太郎
みなそこに魚の哀傷、
われに涙のいちじるく、
きみはきみとて、
ましろき乳房をぬらさむとする。
この日ごろつかふことなく、
ひさしくわれら靈智にひたる、
すでに長き祈祷ををへ、
いまみれば月も皆既なり、
魚の性はせんちめんたる、
みよ、うみはみどりをたたへ、
肉青らみ、
いんいんとして二人あひ抱く、
齒と齒と合し、
手は手をつがひ、
もつれつつからまりにつつ、
いんよくきはまり、
魚の浪におよぎて、
よるの海に青き死の光れるをみる。
青空文庫より引用