決鬪


そらつちとに緑はうまる、
緑をふみてわが行くところ、
靴は光る魚ともなり、
よろこび樹蔭におよぎ、
手に輕き薄刃やいばはさげられたり。

ああ、するどき薄刃やいばをさげ、
左手をもつて敵手かたきに揖す、
はや東雲しののめあくる楢の林に、
小鳥うたうたひ、
きよらにわれの血はながれ、
ましろき朝餉をうみなむとす。

みよ我がてぶくろのうへにしも、
愛のくちづけあざやかなれども、
いまはやみどりはみどりを生み、
わがたましひは芽ばえ光をかんず、
すでに伸長し、
つるぎをぬきておごりたかぶるのわれ、
をさな兒の怒り昇天し、
烈しくして空氣をやぶらんとす、
土地つちより生るる敵手のまへ、
わが肉の歡喜よろこびふるへ、
感傷のひとみ、あざやかに空にひらかる。

ああ、いまするどく鋭刃やいばを合せ、
手はしろがねとなり、
われの額きずつき、
劍術は青らみつひにらじうむ となる。



青空文庫より引用