絶句四章

絶句四章
萩原朔太郎

色白の姉に具されて。今日もまた昔談や。
 あれいま。逍遙うんじて歸る山路。
 遠音に渡るかほととぎすの。

つみとりてそぞろ心や
      くちづけさはに
 願ふは君が髮ぐさ飾るやさし七草。

あかつきや破れし鐘樓に。肩ねびし人と登りぬ
 見よ君。指ざす方に日は出らめ。
 ああかの野路こそいと戀ひしや。

行きずりの小草の中に。床し小扇
      誰がすさみぞや
 これ優しぐさ『秋の恨み』と。



青空文庫より引用