三田社会科学研究会


 成立以来十名前後を上下していたわが研究会も、五月二十四日の公開講演会、その後の講義開始等によって一躍六十余名を擁するにいたった。もし数の増加が同時に質の充実を意味するものであるならば、われわれは会としての強味を誇る何物かを増したといい得るかも知れない。しかしながら多くの場合に然るごとくわが研究会の場合においても、数の増加によって、一時的過渡的の現象ではあるとしても、全体としての会員意識の薄弱――著しく活動的なる少数と非活動的なる大多数との分立――を来したことを率直に認めなければならない。これが大衆獲得の希望をひとまず棄てて、会員相互の結束、会員意識の涵養に全力を集中するにいたった所以ゆえんである。こうした方針の下にすでに二回蝋山氏、高橋氏の臨席を得て雑談会を開いたが、今後もますますかかる会合を催す積りである。
 
五月二十四日左のプログラムで講演会開催。
一、復興対策としての資本主義 高橋氏
一、唯物史観と人生価値 北沢氏
一、社会科学における価値 蝋山氏
 
本年度の講座として既に決定したものは左のごとくである。
 
一、資本主義の構成 高橋氏
一、社会科学方法論 蝋山氏
一、ヒストリ・オブ・エコノミック・ドクトリンス 津田氏
一、社会統計学 北沢氏
一、ピープルス・マルクス
一、プログレス・エンド・ポヴァティー 三辺氏
一、社会科学概論 大山氏
 
 右の中現在開講中のものは最初の四氏であるが、爾余のものは漸次一講が完結するごとに開講せられるはずである。
 ――「学生連合会」会報一九二四年六月二十五日――



青空文庫より引用