草花日記


○九月十日 表具屋を呼びて是真ぜしん筆朝顔の掛軸の表装仕直を命ず。
○十一日 萩見に行く。なお早し。法恩寺は二分、萩寺は三分。
○十二日 小雨、やや寒し。台子だいすを出し風炉ふろに火を入る。花買いに四目の花屋に行く。紫※ 《しおん》と女郎花おみなえしとをえらびて携え帰る。茶を飲みながら兼題の歌、橋十首を作る。
○十三日 岡来る。共に香取を訪う。狭き庭の中垣ともいわず手水鉢ちょうずばちともいわず朝顔を這いつかせたり。蔓茘枝つるれいしの花もまじり咲く。
○十四日 檜扇ひおうぎの花を植う。
○十五日 向島の百花園に行く。萩盛りなり。草花の数八百余種ありとぞ。
○十六日 根岸庵の万葉輪講会に行く。途に金杉の絵師なにがしをおとずれて蓮の絵を見る。
 明治33 年10 月『ほとゝぎす』
 署名  本所 幸男



青空文庫より引用