ゴンドラの唄
唄(若い澄んだ少年の聲。)
いのち短し、戀せよ、少女、
朱き唇、褪せぬ間に、
熱き血液の冷えぬ間に、
明日の月日のないものを。
いのち短し、戀せよ、少女、
いざ手を取りて彼の舟に、
いざ燃ゆる頬を君が頬に、
ここには誰も來ぬものを。
いのち短し、戀せよ、少女、
波にたゞよひ波の樣に、
君が柔手を我が肩に、
ここには人目ないものを。
いのち短し、戀せよ、少女、
黒髮の色褪せぬ間に、
心のほのほ消えぬ間に、
今日はふたゝび來ぬものを。
(吉井勇氏作『ゴンドラの唄』――この一節をイタリアの俗謠の調に依つてうたふ。)
青空文庫より引用