山茶花


 ひとの世の男女の
 行ひを捨てて五年
 夫ならぬ夫とともに
 今年また庭のさざんくわ
 夫ならぬ夫とならびて
 眺める庭のさざんくわ

 夫ならぬ夫にしあれど
 ひとたびは夫にてありし
 つまなりしその昔より
 つまならぬ今の語らひ
 きよくしてあはれはふかし
 今年また庭のさざんくわ
 ならび居て二人はながむる。



青空文庫より引用