滅亡の喜び


 一 

我がは甘くたるみて
痛むかしらもこゝろよし、
この頭くらく、めくるめくとき、
失ひし楽園は幻に見ゆ。

 二 

手はふるひ、足はよろめく
さながら、酔ひどれが
家路へかへるにも似て、
地獄の門に倒れ入らん。

 三 

滅びよ、滅びよ、いとしき我が身、
急げよ、たのしき地獄の門へ。
すべてのものゝ存在せざる
其処そこにこそ我が失ひし楽園はあれ。



青空文庫より引用