作業機械
材料は金属と木と革――有抵抗の物体――
構造は胴と軸と車と槓杆と発条
こいつには脳味噌がないんだ!
こいつには性慾がないんだ!
だが
月と日が惚れ合って
互に近づいて遂に性交したとき
流れ出た汚物の凝固したもの 石炭!
石炭は思い出から燃え上る 天然勢力!
機械は動く
調革…………調車
軸
歯車
偏心輪
槓杆……発条
回転 衝程 弧動――昇降
機械はまわる
晩から朝まで 朝から晩まで
こいつを人間が使ってだ
人々がその慾望を楽々と慰められると思ったが
奴等 金持がにっこりと微笑したに止って
機械の運転者――職工――は機構の一部となってしまった
機械的労働
十二時間
十八時間
徹夜!
寝ぼけてしまった職工
だが機械は疲れず高速度回転!
あっ? 機械が腕を喰った
血……血……血………
(『鎖』一九二三年七月号に発表)
青空文庫より引用