離れてゆく秋


かもめはシグナルのやうに飛びふ!
海底に私はれた火薬として沈む!
赤いマストは折れてドテツ腹を突き通してゐる!
君の心臓には黒い無為の切手が刷つてある!
いかりの上らない程の海の憂愁は
幾匹もの魚を胸に泳がせる!
寒流である―――――――― ● ● ●
はさみで切られてゐる空だ!
握手にのみ充満と爆発はひそむ!
すでに秋は海底から熱情にびをあたへる!

「さようなら!」



青空文庫より引用