三人目の患者



三人目の患者は、
いかにもつかれきつた風をして、
べろりと舌をたらした、
お醫者が小鼻をとんがらして、
『氣分はどうです』
『よろしい』
『食物は』
『おいしい』
『それから……』
『それからすべてよろしい』
そして患者は椅子からとびあがつた、
みろ、歪んだ脊髓のへんから、
ひものやうにぶらさがつた、
なめくじの神經だの、くさつたくらげの手くびだの……。
そいつは眞赤まつか殺人者ひとごろしだ。



青空文庫より引用