早春


なたねなの花は川邊にさけど
遠望の雪
午後の日に消えやらず
寂しく麥の芽をふみて
高き煉瓦の下を行く

ひとり路上に坐りつつ
怒りに燃え
この故郷ふるさとをのがれいでむと
土に小石を投げあつる
監獄署裏の林より
鶫ひねもす鳴き鳴けり
(滯郷哀語篇より)



青空文庫より引用