吝嗇家 極ごく吝嗇しわい仁ひとが御座ございまして、旦「小僧こぞうや。小「へえ。旦「お隣となりへ往いつてノ蚊帳かやの釣手つりてを打つんだから鉄槌かなづちを貸かして下さいと然さう云いつて借かりて来こい。小「へえ……往いつて参まゐりました。旦「貸かして呉くれたか。小「アノお隣で、何なんの釘くぎを打つんだと申まうしますから、蚊帳かやの釣手つりてを打つんですから鉄釘かなくぎで御座ございませうと申まうしましたら、鉄かねと鉄かねとの摺すれ合あひで金槌かなづちが減へるから貸かせないと申まうしました。旦「ムーン然さう吝嗇けちな奴やつだ……ぢやア宅うちのを出して使へ。青空文庫より引用