夏は青い空に……


夏は青い空に、白い雲を浮ばせ、
 わが嘆きをうたふ。
わが知らぬ、とほきとほきとほき深みにて
 青空は、白い雲を呼ぶ。

わが嘆きわが悲しみよ、かうべをげよ。
 ――記憶も、去るにあらずや……
湧き起る歓喜のためには
 人の情けも、小さきものとみゆるにあらずや

ああ、神様、これがすべてでございます、
 尽すなく尽さるるなく、
心のままにうたへる心こそ
 これがすべてでございます!

空のもと林の中に、たゆけくも
 あほざまにまなこをつむり、
白き雲、が胸の上を流れもゆけば、
 はてもなき平和の、汝がものとなるにあらずや



青空文庫より引用