(酒は誰でも酔はす)
酒は誰でも酔はす
だがどんな傑れた詩も
字の読めない人は酔はさない
――だからといつて
酒が詩の上だなんて考へる奴あ
「生活第一芸術第二」なんて言つてろい
自然が美しいといふことは
自然がカンヴァスの上でも美しいといふことかい――
そりや経験を否定したら
インタレスチングな詩は出来まいがね
――だが
「それを以てそれを現すべからず」つて言葉を覚えとけえ
科学が個々ばかりを考へて
文学が関係ばかりを考へ過ぎる
文士よ
せち辛い世の中をみるが好いが
その中に這入つちや不可ない
青空文庫より引用