PANTOMIME

PANTOMIME
富永太郎

うす暗い椽側の端で、
琥珀色した女の瞳が
光つた――夫に叛いた。

もうむかふへ向いた、
庭の樹立と遊んでゐる――
あの狡猾なまなざしは。

とり残された共犯者が
清潔な触手で追ひかける。
だがみんな滑つてしまつた、
女の冷たい角膜の上を。

夫の眼がやつと、鋭く、追ひかけた。
薄闇の中でカチカチとぶつかる、
樹と 夕焼と 瞳と、
瞳と……瞳と……。



青空文庫より引用