暮春詠嘆調


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年ひさしくなりぬれば
すべてのことを忘れはてたり
むざんなる哉
かばかりのもよほしにさへ
涙も今はみなもとをば忘れたり

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人目を忍びて何處いづこに行かん
感ずれば我が身も老いたり
さんさんと柳の葉は落ち來る
駒下駄の鼻緒の上に落日は白くつめたし



青空文庫より引用