深夜


影と銀の乱れる夜へ
月は死葉しにばを刈り立てる。
(魂は忍びを聞く。)

虚空の淵にゆすられる
星のりんを響かす。
(魂は灰を見つめる。)――

渦巻く雲よりのぞ
烈しい闇の裸形らぎやう
(魂は火を失ふ。)――

いつも地平をさまよふ獣の群よ、
いつも雪の降る薄明りよ、
いつもわが閉ぢた窓に映る幻よ、
いつもだんをとる寒い魂よ、
いつも我を裏ぎる我の
心のわなよ 肉の恐怖おそれよ。

いつもいつもつまづくわが神経のいらだたしさ……



青空文庫より引用