或る時の詩 心の嵐あらしが今去つたところだ熱い嵐の中で、つめたい心がこゞえて獣になつて魂の野を走りまはつてゐた。火に烙やかれながら、一つの氷が曇り日の天に向つて叫んだ。心の嵐が今去つたところだ。疲れた氷の火が静かにとけて秋の曇り日の天の下に春のやうなひかりを感じる。やつと見つけたお母さんの乳房に泣きじやくりながら、かじりつく赤ん坊に私のこゝろは似てゐると思ふ。青空文庫より引用